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坊主にクリスマスなんて(青エク/しますぐ)

メリクリFDL第一弾です!

しますぐ!
初めて書いたよ!!

高校生のふざけたクリスマスってかわいいよね!
おまえらー!
何はしゃいでんの男だけでwwww
っていうあのテンション可愛い。
ちょうかわいい。



だがしかし口調が難しいんです
漫画読んでもわからん。





続きで本文



 



**坊主にクリスマスなんて**





「坊、何か欲しいもんあります?」

三週間前、カレンダーの紙が残り一枚になった頃、ピンク色の頭をした志摩がへらりといつもの気の抜けた笑顔を勝呂に向けた。

「そうやな」

授業終わりの教室には居残り自習の勝呂と、それに付き添う――付き添うが当人は勉強もせずにジャンプを読み漁っている志摩の二人しかいない。
びっしりと薬学に必要な調合式やら反応式が書かれたノートから勝呂は顔をあげる。
眉間にシワを寄せて厳つい顔をさらにしかめるような表情に、思わず志摩は吹き出してしまう。

「そんな難しい顔せな欲しいもの出ないなんて難儀なお方ですわ、坊は」
「お前みたいにちゃらんぽらんやないだけや」

志摩の指が深く眉間に刻まれた勝呂の皺に伸びる。
撫でて擦っても無くならないそのあとに志摩の眉は下がるばかりで。

「坊が真面目すぎるからこれくらいで丁度なんです」

目尻が垂れた甘い笑顔を向けられれば勝呂の鼓動がどくりと跳ねる。
いまだに皺を伸ばそうと眉間をこする志摩の指を払うように左手を振ればすうっとその指は消えていった。

「つれないお人やぁ」

はぁ、と盛大なため息をつくわりに楽しそうな声色の志摩を今度はしっかりと無視して勝呂はまた自習を再開させる。
再びノートに鉛筆を走らせる勝呂を飽きずに志摩は見つめていた。

教室には筆記の音しか聞こえない。
うつ向いてばかりの勝呂の金メッシュの前髪が、ヘアピンで止めているのに重力に逆らえず落ちていく。
勝呂も気になるのか何度か止め直すも根本的な解決にはならないでいた。

「切ってしまえばええじゃないですか」
「いやや」
「勉強の時邪魔やないです?」
「それでもや」

量も多く、癖も強い勝呂の髪は細いピンでは限界がある。
うざったいなら子猫丸みたいに坊主にしてまえばいいのに、と思わないわけではない。
またさらさらと落ちてくる前髪をつまみ上げて止め直す姿をぼんやりと志摩は眺めていた。






というのが3週間前。
坊主も走る師走の最終週も近づく今日は。

「メリークリスマス!」

寮の部屋に戻った勝呂に志摩はクラッカーを引いて出迎えた。
僅かな火薬の臭いにまみれた紙リボンがむすっとした表情の勝呂の髪に降りかかる。

「なんや騒がしいやつやな」
「お祭りみたいな日やないですか」

髪の毛に絡み付く前に紙テープを取り除きくしゃりと丸めてゴミ箱に投げ捨てる勝呂に「ひどいなぁ」とピンクの髪に赤白のサンタ帽をのせた志摩が情けなく眉尻をさげて苦笑いをうかべている。

「坊主には関係あらへん」
「まあそうなんですけどね、固いこと言わへんでくださいよ」

クリスマスと坊主。
確かに別の宗教同士だ。
縁のない行事ではある。

まだ剃髪していないが志摩も勝呂も仏教系の家系である。
幼い頃から托鉢には馴染んでいてもクリスマスなどは遠い行事で、実家ではまずやったことはない。

「折角実家やないんやしパーっと下界の祭りをたのしみましょ、ね?」

小さな卓の上にはコンビニのロールケーキと小さなシャンメリー。
実家なら年末年始の支度に奔走している季節だけにそんな簡素なものだけでも二人には充分クリスマスだった。



「で、男二人でどうするゆうんや」

ケーキもジュースも食べつくし、ゴミ箱に投げ込んだ紙コップと包装紙が寂しくクリスマスを主張する。
子供ならばサンタを待つ夜半過ぎ。
学生寮には男子高校生が二人きり。

「じゃあ、クライマックスを飾るプレゼントで」
「はぁ?」

目の前に差し出されたのは小さなクラフト紙の紙袋。
サンタクロースのシールで封されたそれをピンクのサンタが勝呂にむける。

「そこは、わーッ!サンタさんおおきに~♪ってかわええ反応がセオリーやないですか、坊~」
「そんな猫撫で声なぞ出ん」
「出なくても、ですって」

裏声を出す志摩にさらに訝しげな勝呂は眉間の皺を深めたままじーっと紙袋を眺めている。

勝呂には経験がないのだ。
誕生日以外に渡されるプレゼントの意味がわからない。
わかっていても反応ができない。
「ありがとうな、志摩」と一言呟いただけで、袋も開けない勝呂にサンタクロースの格好の志摩はその場で小さくこけて見せ。

「坊~、ほんまなんも知らんのですねぇ」
「何がや」
「やから、『プレゼント開けていい~?』とか『うちも用意したん~』とかあるやないですか」
「あぁ」

転ける志摩の意味も解説しないまで気づかないこの男の鈍感さが志摩は嫌いではない。
むしろ好ましい。
純粋で世間知らずで鈍いこの男がたまらなくいとおしくてついつい怒らせるくらいにからかってしまう。
勝呂が開けていいかと京ことばで問いてきたのを満面の笑みで返せばシールの剥がす音が聞こえた。

「これ」
「最近つこうてるの、緩んでちゃんと留まらへんみたいなんで」
「こんなんたんと」
「色があったらかわいくてつい」

金属製の髪止めクリップがいくつもローテーブルに並べられる。
虹を意識したような青から赤にかけての綺麗な7色は蛍光灯の光りに反射してキラキラと輝いていた。

「何で」
「クリスマスなんでプレゼントですよ」
「何も用意してへん」

両手で大切そうに持ち上げて勝呂は志摩を見つめる。お返しを用意していないと。

「そんなのええですよ。坊にあげたかっただけやし」
「せやけど」

勝手にクリスマスパーティーをしはじめたのは志摩だったのだ、今日の今日までクリスマスを意識していない勝呂には無理な要求である。
それでも享受するだけは癪である。
勝呂だって男なのだ。

「ほんと、坊にあげたかっただけなんです。だから…お返しはこれで充分ですから」

食い下がる勝呂に志摩は少し困ったように微笑むと、その肩を抱いて柔らかな唇に触れるだけの口づけを落とした。

「し…ま?!」

離れたあとにぎょっとした表情を見せて名前を呼ぶ勝呂に志摩は申し訳なさそうにサンタ帽を脱ぐとピンクの頭を掻いた。


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