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1111(コウガト)


今日はポッキープリッツの日ということで。
去年はペダル(兄金)でやったので今年は83にしてみました。

仏頂面でポッキーを食べるガトー可愛いですね。
かわいいです。


そして支離滅裂。



続きで本文





 



**1111**





「その箱の山は何だ…コウ・ウラキ」

呆れたとばかりに腹に響くような不機嫌で低い声をガトーは漏らす。
帰宅してみればアパルトメントのけして広くはないリビングにチョコレートの甘い臭いが充満していた。

「今日がなんの日か知らないんです?ガトー」

ソファーに座り、棒状の菓子を口にくわえたコウがガトーの問いかけに更に質問を被せてくる。
彼の目の前の猫足の白いローテーブルには赤や緑、ピンクなどの色鮮やかな菓子の箱が転がっていて。

一体誰がそんなに食べるのだろう。
成人男子ふたりの住みかである。
菓子など酒のつまみやお茶請け、映画のお供にと少々つまむ程度の消費量だ。
いくら小袋に別れてるとはいえ何ヵ月分になるかも知れぬ菓子の数々にガトーの眉間の皺は深くなるばかりだ。

「質問に質問で返すな」
「すみません。いえあまり有名な風習ではないからね。あなたが知らないのも無理はないかも」
「だから」

なんの話だとまだまわりくどい説明ばかりのコウにガトーは更に低い声を出す。
初対面ではガトーの低い声は背筋がピンとのびるほどの緊張をもたらしたというのに、ひとつ屋根のしたに住まうようになっていい意味でも悪い意味でもその腹に響く低音に慣れた今では甘い囁きにしか聞こえない。
(ただ貴方の声が聞きたいだけなんて言ったら怒るだろうな)
積まれた菓子からまた新しい箱を取って袋を開ける。
身体中に響く低い声が心地いいから、真っ直ぐなガトーを刺激するような回りくどい言葉を選んでいるだなんて不謹慎だろうか、と緑色――抹茶味の棒菓子を口にくわえてポリポリと軽い音を立てて口の中に滑らせていく。
もう少し最近は滅多に聞けなくなった険しい声を聞いていたいと思ったが、ふと見上げたガトーの眉間に思いがけなく深い皺が刻まれていたものだから、さすがのコウも食べるのを少し置いて話の続きをすることにした。

「地球の菓子メーカーの作った記念日なんです」
「記念日?そういったものは国家が制定するものだろう」
「だから、正式なものじゃないんだけどね」

いまだ帰宅した格好でソファーの手前で立ち尽くすガトーを手招いて隣に座らせる。
納得しかねるといった面持ちのガトーに少し困ったように苦笑いを向けると、開いた袋から4本細い菓子を取り出して机に横一列に並べた。

「今日は11月11日だろ?ほらこうやって並べると……1が4つ並んだように見えるから」
「とんだ駄洒落だな。ただのメーカーの販売戦略に過ぎないだろうが」
「まぁ、そう言われちゃえばそれまでなんだけど」

先の戦では理想を追い求めて戦っていたガトーも実生活に置いてはひどく現実主義なところがあるようだ。
腕組みをして背筋を正したまま積み上げられた菓子を睨み付けている。
机に並べられたうちのひとつ、人工染料でピンクに色付けられたそれをコウは手にして隣のガトーの口許に運ぶ。

「『「この味がいいね」と君が言ったから 七月六日はサラダ記念日』なんて古代日本の文芸作品にもあるみたいに記念日なんて適当なんだよ。ほら、」
「ふむ」

手渡そうと思って差し出した菓子をそのまま口にくわえて食べだしたガトーにコウはその丸く黒い瞳をパチリと瞬かせた。
ポリポリと軽快な音を立てて菓子が口の中に消えていく様子は大の大人――コウよりも一回り大きなガトーだというのにどこかリスやハムスターを思い出させて。

「美味しい?」
「まぁ、普通だ」
「量産品だからね」

チョコのついていない持ち手の部分まで飲み込まれていく様をコウはゆっくりと眺めると、また今度は違う色のそれを手に取って差し出した。

「これは?」
「抹茶……グリーンティだよ」
「ふむ」

先程と同じように胸前で腕組みをしたままコウの差し出す菓子をくわえて食べ出すガトー。
(これじゃあ餌付けみたいだ)
コウが甘えるようにガトーに食べさせて欲しいと願っても「甘えるな、君はもいいい年をしてるじゃないか!」とひどい剣幕で叱るくせに。
自分より6歳も年上のあなたはいいのですか?なんて疑問をふとコウは思ってしまうがそれは絶対に言葉にできない。

「次は何がいい?」
「そうだな」

「普通だ」という割りにガトーもコウが用意した菓子が気に入ったのか抹茶が食べ終わる頃にはコーヒークリームでデコレーションされたものをまたコウの手から食べ始めた。

これは甘えているのか?
ガトーの口の中へ消えていくチョコレート菓子を眺めながらそんなことを考える。
普段はあれやこれやと厳しい恋人であるから、こうしてコウのなすがままに菓子を食べる様はさながら猫がはじめて飼い主になついたような感覚に似ていて、先にのべたような「自分にはしてくれないのに」という感情なんて些末なことだった。

「ふむ、これは甘すぎるな」
「そう?僕はこれくらいのがいいな。高級感出してるところとか」

口はしについたコーヒークリームをぺろりとガトーの赤い舌が舐めとっていく。
コウの視線はその滑らかな動きに吸い込まれていく。

「これで高級?」
「本数は半分以下なのに値段は5割り増しなんですよ」

コーヒークリームにオレンジを聞かせたビターチョコでデコレーションされたものをガトーはひとつつまみ上げると鼻の高さまで掲げてゆっくりと検分している。

「確かに先程の抹茶やらイチゴやらにくらべてボリューミーではあるな」
「でも質より数だと思うけど」
「だがこれは沢山食べるには味が濃すぎるだろう」
「まぁ、そうかもね」

もう食べないのだろうか。
真一文字に結ばれた唇を横からじっと眺める。

「どうした、ウラキ」

「食べたいのか?」と自分の視線に気づいたガトーがこちらを向いた。
もう充分に量を食べていたので、もう甘いモノは必要ないと脳が指令を出す。
(でも、いまだったら)
もしかしたらガトーが手ずから食べさせてくれるかもしれない。
そう下心を十分に含んだ甘い欲望がコウのなかに芽生えてきていて。

「ええ、僕まだ食べてないんだ」

目を細めてニッコリとつぶやけば「そうか」とガトーはつぶやいたあと、手にした菓子をコウの唇の前まで差し出した。
甘いコーヒーとオレンジの香りが鼻孔をくすぐる。

ぽきり。
前歯で小さくその硬いクッキーの芯を折る。
離さないでほしい、と菓子をつまむガトーの手のひらを握ったまま段々とその芯を短くしていく。
(うさぎみたいだ)
先ほどまでガトーに抱いていた感想を自分に向けたときにはすでにチョコレートでコーティングされた部分は胃の中に消えており、形の良い指が隠す最後の端の部分だけが残る形になっていた。

「うらき、なにを」

最後の人かけを摘んだままの親指と人差指に舌を這わせる。
口内へとそっと誘ってその先端をちゅう、と吸えばガトーの白い肌がわずかに赤く染まるのが見えた。

「チョコ、付いてたから」

チョコなんてついていない。
だってガトーはクッキーの部分しか持っていなかったから。
そんな簡単な嘘なんてお見通しだろうから、その後続く小言の1つや2つ受けてやろうと心に決めて上目遣いにガトーを見つめた。

「そうか」

「何を言っているんだ君は!そう破廉恥なことばかり」なんて罵倒の言葉ばかり頭の中に浮かんでは消えて浮かんでは・・・を繰り返していたせいか、思いがけなく漏れた柔らかい返事にコウは目をぱちくりと瞬かせることしか出来なかった。
一瞬気を抜いていたから。
だからすうと顔を近づけたガトーに対して反応が遅れて。

ぺろり。

気づいたときには、ぼんやりと半開きにされた唇の恥をガトーに掠め取られてしまっていた。

「が、がとー?!」

舐められた唇がまだ熱くてコウは左手で口元を覆う。
何が起きたのかわからない。
まん丸の瞳を銀色の髪を持つ男に向けた。

「クリームがついていたぞ・・・やはりかなり甘いな」
「ガトーも、甘かったですよ」
「そう、か」

テーブルの上からまた菓子をつまみ上げて口に加える。
チョコレートだらけの菓子なのに、どうしてだろう、舐めたガトーの指のほうが甘いような気がした。



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