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約束:02(兄金)


こないだの続きの(兄)×金(年の差)です!!

もういろいろ端折りまくったけど、イメージ通りだったぜ!!
だめだめgdgdなのは仕様なんだからね!!



それにしても、ホント金城さん可愛くて困るんですけどどうしたらいいですか←



あー
たまらん!




明日はチャンピョンかってはがきだすぞー
おー



 

つづきから本文
 


夢を見ているのかと思った。

花吹雪の向こうで笑うあなたがとても綺麗で、年甲斐もなく、俺は、あの頃のように大粒の涙をこぼしてしまった。




***約束:02***




寒咲通司がフランスへ渡り行く度目の春を迎えた。

気づけば、幹よりも小さかった真護の体はいつの間にかクラスで一番の大きさになり、骨格も筋肉も成人の男性よりもガッシリとしていた。

「真護くんもいなくなっちゃうと寂しいな」

薄紅色の花弁が舞い散るなか、幹が口を尖らせながら笑った。

「すぐに戻ってくるさ」
「うそだーきっと、向こうのほうが楽しくって帰ってこないよ」

ヨーロッパはいっぱい大会があるんだから!と指を折って有名な大会名を告げる少女の柔らかな黒髪に手のひらを添えて笑う。
小さい頃から兄の後ろをついて自転車を漕いでいた少女は、競技はやっていなくとも、整備や知識は真護よりもよくできる。

(通司さんの妹だけある)

兄が渡仏してから実家の自転車屋を手伝うようになった。
もう何年になるだろうか、彼女が手伝い始めた年数を数えていれば浮かぶのは兄・通司の面影。


(もう約束なんて忘れてしまったかな)

優しく笑う姿は、小さい頃からの真護のあこがれだった。あこがれというにはもう気持ちは膨らみすぎて、足りないほどで。
いうなれば

「恋」

そんな言葉が似合う感情だった。

(もう十年だ)

小さな頃、真護は通司と一つ約束した。
本当にたわいも無い、子供の戯れのような言葉遊び。



『大きくなったらフランスで結婚式をあげよう』



泣きわめく子供をなだめる嘘だったのかもしれない。
そう、頭の中で思う自分がいるのに、その反対にひどく期待している自分もいた。

怖かった。
約束覚えてる?
その一言が言えなかった。

言えなかったために、フランスへ渡ったとお時の手紙を開けることができない。
『彼女ができました』
そんな言葉がかいてあったら、多分、壊れてしまう。

無表情に固めた鉄壁で守られたひどく弱い心が折れないように、ずっとずっと避けてきた。
自分の都合のいい解釈ができるように。
夢のなかで押し込めてられるように。

 


真護は高校最後の日に裏門を徒歩で抜けた。
三年間総北に通ってきて最後の日にして最初の経験だった。
長い長い下り坂は斜面が急すぎて、遠くの街並みや、九十九里を迎える壮大な海しか見えない。

不意に山から吹き降ろす春風に花びらが吹雪のようにまった。
眼鏡はしていたけれど、烟る砂に目を細める。

視界が悪い。
こんなにも空は青く澄んでいるのに。



「あ、真護、漸く出てきたじゃねえか」


懐かしい声が悪い視界の中、遠くから聞こえた。

白昼夢でも見ているのだろうか。
愛しくて、愛しくて、会いたくてたまらない人の声が聞こえた。
日本にいるはずの無い、遠い空の彼方、遠くの国に言ってしまった大好きな人の声が。

「通司、さん?」

「真護でかくなったなあ」

花吹雪の中うっすらと見えたのは、少し年をとった、愛しいあなたで。

明るい茶色に染められた頭髪に、外国製の細いタバコを加えて、よ、と彼の実家のワゴン車の脇で片手を上げて彼は現れた。
真護のもとへ。


夢かもしれない。

夢に違いない。

きっと、夢だ。

こんな都合のイイことが起こるはずが無い。
吹雪の中俺は別世界に紛れ込んでこんな都合のいい夢を見ているのだ。


「おまえ、ロードは?」

「今日は乗ってきてません」

「何だよ、折角車出してきたのに」

隣に並んだ年上のお床よりもせが高くなっていた。
きっと一回りは違うだろう。
10年前までは彼の腕の中にすっぽりと収まる大きさだったのに、もう、それは綺麗に逆転してしまった。

「そーいや、お前大学こっちなんだってな」

「ええ。幹から聞いたんですか?」

「まーね、だってお前俺が手紙出しても返事のひとつ出さなかったじゃん」

「すみません、いそがしくて」

唇を尖らせてすねたような態度をとるのは、やはり兄弟だな、と真護は思う。
10も歳が離れているというのに、彼女の面影が兄の通司にも見えたし、幹の挙動や性格も彼が同じくらいの歳の頃と変わらなくて、そこが真護にとってはうれしいことでもあったし反対に、自分を苦しめることでもあった。

急に恥ずかしくなって目をそらしてつぶやいた。
まともに彼の顔が見えない。
見れない。

挙動不審の自分を見られたくなかった。
瞳の奥の、汚い感情を。


「全く、お前さー、ホント俺の事好きなワケ?それにしても冷たすぎるんじゃねえかよ」

「え?」

思考が止まった。

目の前にいる寒咲通司は今なんと言ったのか。
聞こえているはずなのに頭に入ってこない。

風が止まった。
あんなに強く吹き降ろしていたはずの春風が止まり、空で踊っていた花弁が力なく地面に落ちた。


「約束忘れちまったのかよ、」

「やく、そく?」


言葉がうまく紡げない。

きっと夢だからだ。

言葉がでないのも、都合のいい言葉ばかり聞こえるのも、みんな。

みんな。





「大きくなったらフランスで結婚式あげるんだろ?」





きっとこれは夢に違いない。

そう思おうとするのに抱きしめられた腕の強さと、鼻をくすぐる懐かしい彼の香りが、真護を現実を教えていた。


「やくそく、おぼえていてくれたんですね」

「もちろんだよ、可愛いお前の頼みなんだから」

「もう、かわいくない・・・」

大粒の涙が頬を伝って通司の肩を濡らす。
もう何年も涙なんて出していなかったのに、涙なんて忘れてしまったいるはずなのに、わんわんと子供の頃のように止めど無く目尻から零れ落ちて。
あやすように背中や頭をなでる大きな手のひらが、ひどく気持ちよくて、甘えるように頬に鼻を摺りつけた。


「なにいってんだよ、お前は何時まで経っても俺の可愛い真護なんだよ」


涙でびしょ濡れになった頬を両手で挟まれた。
ゆっくりと彼の薄い唇が、おでこ、眉、瞼、鼻、頬と順々に真護の肌に触れていく。
暖かく柔らかな感触に、気づけば涙は瞳の奥ん戻っていって、桜吹雪が止んだ真っ青な春の景色の中に、大好きな、逢いたかった寒咲通司そのひとが立っているのを、真護は漸く直視できた。


「通司さん、大好きです」


10年間言えなかった言葉は簡単に唇をすり抜けて。
どんよりと重く垂れた心の雲はいつの間にか晴れて、今日の空のように住んでいた。


「うん、しってた」


優しく返されたテノールの声。
ひとつ、春の花のように鮮やかな笑顔が通司の顔に咲くと、そっと息を吸い込む様に、二人の唇が合わせられた。

また風が大きく吹いた。
二人の姿を隠すように、地面に落ちた花びらが舞い上がり、鼻のカーテンを下ろしていた。

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