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直江のスーパークールビズ講座(炎の蜃気楼:直高)

 
節電とか温暖化防止とかに逆行してる格好の直江さんから、一言!!

ってひどいです。
もとはツイッターで、直江はクールビズに程遠い男だねって話をしてて
さ。

というわけで、
直江にクールビズについて語ってもらいました





続きで本文



 



**直江のスーパークールビズ講座**





 
日本列島全域が梅雨に入り湿度の高い日々が続く。
その上、温暖化により平均気温が上がったためまだ7月にもならないというのに真夏並みの蒸し暑さだ。
政府や企業は年々気温とともに上昇する電力消費を抑えようとある革新的な対策を打ち出した。


「クールビズだから、これ」

白い半袖のワイシャツに茶色のスラックス姿の高耶が白い歯を見せて笑う。
第2ボタンまで開けられたシャツには先月までつけられていたはずの赤いネクタイがない。

「クールビズ…ですか」
「校則違反じゃねー訳だからな。あやしんでんなら譲と千秋にも聞いてみろよ」

ウィンダムの助手席に座った高耶は言い訳のような言葉をハンドルを握る直江に向けた。
至って軽装な高耶と比べ、直江といえば気温が30℃近くあるというのに相変わらず真っ黒いスーツにネクタイを喉元まできっちりと締めている。

「わかってますよ。私はてっきり鎖骨まで見せているからこんな昼間からあなたが誘っているのかと思っただけです」
「…んなっ、お前…」
「嘘ですよ、全くあなたは下らないことばかり信じて…」

クスクスと前方を見ながら直江が笑い声を上げればふくれ面をして高耶はそっぽをむいてしまう。
まだ幼さの残るそのしぐさがたまらなく愛しくてついついからかってしまうのを止められないのは直江の悪い癖だろう。

「それはそうと、クールビズがそんなに広がるとは思えませんでしたね」
「そうか?ネクタイ無いだけで全然ちげーぞ」

つい数年前に政府のお偉いさんがこの提案を打ち出したときは次の夏には忘れ去られるようなものだと直江は勝手に思っていた。
形式と伝統を重んじる国民性に根付くとは思えない。
しかし年を重ねるごとにクールビズブームは激しさを増し、近年では『クールビズをしないことが不自然』であるような風潮ができはじめている。

「心頭滅却すれば火もまた涼し、と言うでしょう?ネクタイを外さなくともコントロールすればこれくらいの気温ならばスーツで過ごすことも簡単だ」
「お前はそーかもしれねぇけどよ」

暑苦しい格好をものともせず、年中黒いスーツを着込むも汗ひとつかくことのない男の言葉に高耶は眉を寄せながらつまらなそうに唇を尖らせた。
心頭滅却などと直江は簡単に口にするが実際肌に当たる湿気の多い風は体感温度を上げ、べたべたした汗がまとわりついて不快指数まで上がるのだ。そんな気候で己をコントロールできる人間が何人いるだろうか。

「まあ…たかがネクタイひとつで節電や環境への貢献ができるならば安いものでしょうが。だからといって行きすぎたクールビズはただの無精にしか見えませんよ」

視線だけを高耶に投げてシニカルな笑みを浮かべた直江はブレーキを踏んだ。
ゆっくりと減速する車は赤信号の手前、停止線ぴったりの位置に止まる。

通気性のよい素材で作られたスーツから始まったはずなのに、ノーネクタイから、ポロシャツ、アロハシャツとどんどんとラフな格好に変わっていく。
目の前の横断歩道を渡るサラリーマンの姿も様変わりし、休日のような出で立ちの男性が片手に堅苦しい書類鞄をもって世話しなく行き来していた。

「威厳も何もないじゃないですか。あの姿では」
「そうか?」

わからない、とばかりに高耶が前を行くサラリーマンの群れを眺めては首を傾げる。
高校生の高耶にとってネクタイなど面倒臭いただの飾りにしか過ぎない。
直江が言いたげな威厳を表すための小道具だとは理解できないでいた。

「まぁ、威厳…というのは言い過ぎかもしれませんが、ネクタイは重要な小道具ですよ」

信号が青に変わり車体が動き出す。
ゆっくりとではあるが徐々に加速する車に回りの景色は次々と流れていって。

「モノトーンになりがちな男性の洋服に彩りを添えて華やかさを演出するにはうってつけだ。ネクタイの色によって印象が変わることだってあるんです。ネクタイで相手に与える印象を変えて交渉を有利に運ばせることだってできる」
「それは聞いたことある。赤はリーダーシップとか黄色は親密さとか」

窓の桟に肘をついて高耶が直江に言葉を返す。

「実際その彩りを使ってネクタイを決める政治家もいるくらいだ」
「へぇ、」
「それに…」

直江がハンドルを切って車を路肩に停める。
あまりに突然のことに驚いて高耶は運転席の男を見つめた。

「何だよっ…急っ…」

詰る言葉はごくりと鳴る自身の喉の音にかき消されていく。
視線に刺さるのは指を結び目にかけてゆっくりとそのネクタイをほどく直江の姿で。

「ほら、あなたも…」
「……」

ゆっくりとネクタイが首もとから落ちていくだけなのにそこから目が離せなくなる。
そしてネクタイを外す指の動きにあわせて鼓動が弾けそうなくらいに音をたてる。

「俺がネクタイを外しただけなのに穴が開くほど俺を見つめてる。目が…離せないでしょう?」
「直江、」

直江の唇にうっすらと笑みが浮かぶ。
低く甘い声が高耶の脳内に響き渡り更に緩められたネクタイと直江の手から視線を外すことが難しくなった。

「ほら、俺がただこうやって外すだけであなたは欲情する。ネクタイがなければこんな誘惑の仕方なんてできない」
「お前…これだけのためにネクタイを?」

高耶の心臓は激しく打ち震え、目を細めて艶のある笑みをうかべる直江から未だに視線を外すことのできないでいた。

「いえ。私への戒めですよ。これはいわゆる戒律だ。これがあるから私は私でいられる・・・この枷がなくなったとき、俺は・・・」
「なお、え」

琥珀色の瞳の奥に怪しげな熱を持った炎が見えた気がした。
しかし、そののち、一瞬にしてまたもや喉元まで締められたネクタイによってその炎は消え、もとの穏やかな表情の直江に戻っていた。

戸惑いと少しの怯えを含んだ高耶の瞳がすっと直江からそらされryと、またゆっくりと車が動き出す。
窓の桟に肘をかけ、高耶はそこに映る自分の姿を眺める。
まだかばんの中に詰め込みっぱなしだった赤のネクタイを白いワイシャツの上から結んでみたけれど、ただ息苦しさと暑苦しさが増すだけだった。


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