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あらしのよるに 1 (今→金)

こんばんわお久しぶりです。

もう9月だっていうのにクソみたいに暑いですね・・・
先週は、夕立が来たりで大変だったし・・・
早く秋になってほしいものです。

というわけで、
片思今金です。

やっぱ、今泉が金城くんと幸せになるビジョンが見えません・・・・
1年金城くんならガードが薄そうなので今泉だって行けそうなんですが、
大人でかっこ良くって頼り甲斐のある金城くんだから恋をしたのかと思うと複雑です。






続きで本文










**あらしのよるに 1**






ゴロゴロ……

秋に近づく晩夏の青空がつい半刻程前まで広がっていたと言うのに、部室の小さな窓から覗く空は低い灰緑の雲に覆われていた。
幸いにもまだ雨は降っていなかったが、離れた場所から低い地鳴りのような雷鳴が聞こえてくる。


「雨…降りそうっすね」
「そうだな」

部室で日誌を書く金城からそっと窓へと視線を移し今泉が呟く。
今にも泣き出しそうな程に落ち込んだ空。

「先に帰っても構わない」

そう呟いたのは金城だった。
いいえ、待っていますと首を振って居残りを決めた今泉にそっと視線を上げて金城が笑いかける。


「熱心だな」
「いえ…」

また首を横に振る。
今泉は部活後に金城と駅までのタイムアタックをしてほしいことを告げていた。
日誌や片付けがあるからと一回は断られてしまったが、待っているからと食い下がらずに懇願すれば、金城も了解してくれた。

先述したような今泉のこの部活外での自転車への打ち込みかたが、金城が彼を熱心だと評する一因を担っているようだ。
しかしこれは自転車への熱心さとは違うベクトル、違う軸に乗ったものであると今泉は己を分析していた。
いや、自転車に熱心さがないと言うわけではない。
それは個人による自主練の量を見ればすぐにわかる。
しかしこれはただ単純に速くなりたい強くなりたいということのために行われているものではないのだ。


「あと少しだ、辛抱してくれ」
「……ッ!はいっ」

ぼうっと今泉は金城の手の動きを眺めていた。
武骨な男の指がすらすらと動き白いノートに几帳面な文字を描いている。

今泉、と名前を呼ばれて顔をあげれば申し訳なさそうにりりしい眉毛を僅かに垂れさせて笑う金城と目があって息を飲んだ。
目が合うだけで呼吸が止まる。
息づかい、指の動き、肌の質感全てが今泉の感覚を刺激する。


返事をした喉がカラカラに乾いていた。
飲み込む唾液も分泌できなくなっている。
今泉は緊張していた。
強くなる雨、近づく雷鳴。
このまま帰れなくなってしまえばと思うほどには真向かいにいる坊主の男――金城に恋をしていた。


ゴロゴロ…

雷鳴が激しくなる。
すりガラスの埋め込まれた窓の向こうが一瞬明るくなった。


「近づいてきてますね」
「あ、あぁ」

地響きのような音と共にピカリと閃光弾が炸裂したような目映い光が薄暗い蛍光灯の部室を照らした。
続いてブツンッと全ての照明が失われる。

停電だ。
近くに落ちて部室棟一体が 停電したようだ。
ざわざわと周囲の部屋に残る生徒の落ち着かない足音や声が暗闇に響いた。


「……ヒィッ、」

小さく息を飲む音が聞こえた気がした。
雨音に消えてしまうほどの僅かな息づかいに今泉は耳を澄ませる。


「金城、さん?」

名前を呼ぶ。
なれない闇に目を凝らしながら机の向こうを覗き込んでも気配すら感じられない。


「金城さん?金城さん!」

机の縁をなぞって反対側に回る。
目を凝らせば、椅子からずり落ちて床で踞る金城の姿が見えた。
慌てて走り寄って固まる背中を摩る。
ぜぇぜぇと荒い呼吸を繰り返し背中を震わせる主将に今泉の心は大きく拍動した。

不謹慎かもしれない。
しかし普段は大きすぎるその二歳年上の男に恋情を覚えるも気後ればかりしていたのだけれども、こんな風に弱っている姿を見ると自分とも変わらない高校生だと自覚できて何だか優位にたてた気がした。
ただの自己満足でしか無いのだが、思うだけの恋を、見つめるだけの恋をしていた今泉にとってはうまくめぐってきたチャンスであるのだ。


「大丈夫っすか?」

苦しげな呼吸を繰り返す金城の横に自らも跪き顔を寄せる。
脂汗のにじむ手のひらを腰でぬぐって固く握りしめられた拳に手を重ねた。


「だ、いじょ…ぶ…だ」
「全然大丈夫に見えないっすよ……ほら、息吸って下さい」

触れる金城の肌はひどく冷たかった。
ぶつぶつと鳥肌が立っているのがわかる。
肩を抱き締めて頭を自分に凭れさせ、トントンとその肩を叩いて早くなりすぎた鼓動を宥めるが金城の震えは収まらない。

抱き締めて口づけて強引に自分のほうを向けたい。
弱っている相手にだったら、この臆病な恋心も伝えられる気がした。

しかし現実にはその止まらない金城の震えは今泉を焦らせていた。
こんな状態の主将を連れてこの雨の中歩いて変えるのは無理だろう。
このまま閉じ込められるように部室で一夜を明かすには今泉の理性はギリギリだった。

どうにか持ち直させて下校しなくては。
自分がどうにかなってしまいそうだった。

「俺が……俺がいますから、大丈夫…っす…」
「うぅ……あ、……きさッ、さき、さっ…」
「……ッ!……俺が、俺……がっ」

紫に変色した唇が今泉ではない別の名前を呼ぶ。
微かな音だったけれども、その名前には聞き覚えがあった。

近くにいる自分ではなくここにはいない男を呼ばれて今泉の表情は自然と強張っていく。
せめて知り合いでなければ…。
今泉の知るよしのないクラスメイトや他学年の名前なら彼女だろうかと諦めもついたのに。
震え青ざめる唇を見つめていれば沸き上がる口づけへの欲望。


「金城、さんっ」

一息吸って震える肩をつかんで真正面で向き合う。
黒縁の眼鏡の奥に涙で濡れた黒い瞳。
普段の意思の強さや真っ直ぐさは消えて、そこにあるのは怯えてすがるように不安に溢れた二つの硝子玉だけだった。


「ひっ……あ、……いま、いず、み?」
「俺です、今泉です……もう、雷過ぎましたから…大丈夫、っす」

肩から背中にゆっくりと腕を回していけば縮まる距離感。
胸に当てられた金城の両腕は力が抜けて近づくその距離を止めることはできない。


「金城、さん…俺が、」
「今、泉……」
「俺が…居ますから」

鼻先が触れ合う。
やめろと漏れる小さな拒絶は聞こえないふりをした。
今泉の胸元で握られた拳にきゅっと力が加わる。息が重なりあう。
唇まであと、もう少しだ。



きんじょうさん、すきです。
消え入るような声はこの嵐の中でも聞こえているだろうか。







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空知椎音です。
日記という名の萌がたり・妄想垂れ流し、アニメリアタイ実況、マンガ感想などはだいたいツイッターで垂れ流しています。
こちらは完全に小説置き場になっていますので、日常日記はほぼありません。

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