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ショート・ショートケーキ(兄金)

 クリスマス!
ってことで!
頑張って今日からクリスマス当日までにいっぱい書きますよ!ってことで!

久々に兄金です!!


またも、金兄に見えなくもない罠。。。。。。








超短い!!!








続きで本文



  





**ショート・ショートケーキ**






店内に流れる有線放送からは往年のクリスマスソングが絶え間なく流れてきた。
寒咲の頭にも赤と白の三角帽が乗っかり、工具や部品で溢れるガレージにも小さなツリーが飾られている。
どんよりと空を覆う雲はあれど、夜更け過ぎになっても雪は降りそうになかった。

「きっと君はこない、一人きりのクリスマスイブ…」

有線放送にあわせて寒咲が小さな声で口ずさむ。
妹は学校の友人と過ごすと言って登校したきり戻らない。
両親も夕方に二人で出掛けてしまい、自宅兼店舗の寒咲自転車店には寒咲ひとりしかいなかった。

「寒咲さんサンタの格好、似合いますね」
店仕舞いの最後、シャッターをしめようと外に出ると私服姿の金城と目があった。

「どうした?こんな時間に。営業時間は終わってんぞ」

閉めかけたシャッターを再び開けようと手を伸ばすも金城の脇に彼の愛車がないことに気づく。

「ロードは?」
「今日は徒歩できました」
「わざわざどうしたんだよ」

眉を下げて笑うとエプロンのポケットの中からタバコを取り出すと火をつけて大きく息を吸い込んだ。
金城の家とこの自転車店は駅を挟んで対角線上にある。
自転車でくれば15分もかからない距離だが歩いて来るには直通のバスもなく不便なところだった。
だいたい彼がこの店による時といえば愛車のメンテナンスや部活関係のことが多く、それ以外の用事というのが浮かばない。

「寄ったついでに上がってくか?」
「はい、お言葉に甘えて」

短くなっていくタバコを、店の脇に置かれた灰皿でもみ消すと親指を立てて店の真上にある自室を指さす。
目の前で丈の短いコートを羽織る金城は真っ白な息を吐き出しながら嬉しそうに目を細めた。

「って、誰もいないからおかまいできないけどな」

シャッターの鍵を閉めて横の玄関から家へと上がる。
壁に貼り付けられたスイッチを手のひらで乱暴に押すとポーチライトから現在へ続く廊下まですべてが明るくてらされた。
寒咲の他の家族は出払ってしまっていて物音ひとつしない部屋はしんと静まりかえってもの寂しい。
喋る声と廊下を進む足音だけが冷たい室温に響いていた。

「大丈夫です。・・・・・・・実は、誰もいないって知ってたから来たんです」
「へ?」
「マネージャーが、今日は1年同士で駅前のファミレスでクリスマス会だと言ってたんで、もしかしたら寒咲さん一人かな、と」

お邪魔でしたか?
目を伏せたあとゆっくりと相手の反応を伺うように一段下がった三和土から上目遣いに寒咲を見上げる金城と目があって訳も無く心の奥がむず痒くなった。
普段は眉一つ動かさない様な真面目な男だと言うのに、寒かったのか赤くなった頬を抑えながらはにかむ姿が大人びた雰囲気を持つ金城のイメージを崩していた。
(幼い顔もできんじゃん)
普段は小難しい顔しか見せない金城の柔らかな表情を見たのが知り合って2年半以上になるのに初めてで漸く心を許してもらえたのかと釣られて寒咲の顔にも柔らかな微笑が浮かび上がった。

「なんだ幹のやつやっぱり部活の奴らとパーティーだったのかー」
「彼氏が良かったんですか?」
「まさか。今朝かなり挙動がおかしかったから、友達とか言って実は彼氏と勝手思ってたんだけど」
「杞憂でしたね」

店に出ていた間暖房を消していたリビングはむき出しのフローリングの床に冷やされて外よりも寒いように感じる。慌てて暖房のスイッチを押せばゴオオと大きな音を立ててエアコンが温かい風を送り出す。
それでも屋外での作業をしていた寒咲の体はなかなか温まることはなく心まで冷え切った指先を握り、平井手を繰り返す。

「そーだなー。兄としては彼氏がいなくて大丈夫かと思う反面、」
「いなくて安心、ですか?」
「当たり前だろ」

心のなかを読むような金城の言葉に寒咲は困ったように笑ってみせる。
今まで「お兄ちゃんお兄ちゃん」と後ろを付いてきた妹が高校に入ってからは、四六時中一緒に過ごすということがなくなってきた。
漸く兄離れか、と肩の荷が降りた気分になるが、今まで隣にいた妹の存在感が無くなってなんとも言えない喪失感が寒咲を襲った。

「で、金城、なんでうちに来たんだよ。幹もいないのにさ。俺がひとりだって知ってたんだろ?」
「ええ、まあ」

歯切れの悪い金城の返答に寒咲は唇を尖らせる。
わざわざクリスマス当日に、わざわざ部活の先輩の男を訪ねるなど今の寒咲には理解できなかった。
真面目すぎるという欠点はあるが整った顔立ちの金城だ。誘う声は絶えないだろうし、幹と同様に同学年の集まりがあってもいいはずである。

「巻島や田所と騒いでればいいじゃん」
「それでは、だめなんです」
「へ?」

ダメなんです、とうつむいてしまった金城の手のひらには、駅前の有名洋菓子店のケーキの袋。

「ダメなんです」
「なんで?」
「寒咲さんが、ひとりだって聞いたので・・・・・」

自分より図体の大きい男が耳まで真っ赤にさせてしどろもどろに言葉を紡ぐさまはひどく滑稽だったのに、それを笑ってはいけない気がして寒咲はじっと見つめるにとどまった。
目の前の金城が次の言葉を紡ぐのを、聞き漏らさないように、じっと、じっと見つめる。

「で?」
「一緒にケーキをと思って」
「わざわざ?」

コクリ、と恥ずかしそうに小さく頷いた金城が見てくれに似合わず可愛いと思ってしまった。
自分の為にわざわざクリスマスに、わざわざケーキを買ってやってくるその姿が。
体の奥底から名前の知らない感情が湧き上がって寒咲の全身を包む。
目の前の体格のいい後輩の頭をこれでもかと撫で回して抱きしめてしまいたかった。

「迷惑、でしたか?」
「ん、いや。ぜんぜん。むしろ・・・・」

嬉しい。

ありがと、とにいと白い歯を見せて笑顔をみせてやれば、困ったような苦しいような金城の複雑な表情は消えてぱああとその顔に明るい光が差した。

「ほら、コーヒーいれるからそこ座れよ」
「ありがとうございます」

真っ白な陶器の皿にいちごの乗ったショートケーキを乗せる。
ふたり分のコーヒーを入れて向い合って他愛もない話を続ける。
雪のようにとろける生クリームを頬張る。

体の底から湧き上がったまだ名前の知らないこの感情は、目の前にあるショートケーキのようだった。
甘くて、すぐに溶けてしまいそうなほど繊細な、この思いは。




「金城、恋してる?」

「え?」
「俺は、今恋をしたよ」

とても恋に似ている。





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空知椎音です。
日記という名の萌がたり・妄想垂れ流し、アニメリアタイ実況、マンガ感想などはだいたいツイッターで垂れ流しています。
こちらは完全に小説置き場になっていますので、日常日記はほぼありません。

支部にも同時にUPしています。
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