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約束:01(兄金)

ペダル寒咲(兄)×金城です^q^

しかも


(兄)(15)×金城(8)



とか誰得^q^<俺得!!





続きからいろいろ



子供の頃は何だってできると思っていた。
自分が願えば何だって。

それが、どんな夢物語だったかなんて、大きくなってから気づいて、そのせいで失ったものの大きさを、どんなに大切だったかを、漸く理解するんだ。

あなたは覚えているだろうか?
あの約束を。

小さい頃に交わした夢のような、約束を。






***01:約束***





小さい頃の俺は、泣き虫で、今よりももっと無口で人見知りだった。
両親の都合で近所の自転車屋の兄妹と一緒に過ごし、一緒に育った。
今では体も成人の大人よりも大きく鳴ったが、あの頃は2歳年下の少女――寒咲幹と同じくらいだった。

年齢も近い俺と幹は登下校も、遊びも一緒だった。
周りの大人は「幹ちゃんと真護くんはお似合いね」と笑ったが、俺はその言葉が嫌いだった。
幹が嫌いだったわけではなく、俺にはもう好きな人がいたからだ。ませてる、と散々幹にも言われたが、もう俺は、あの人に夢中だった。





「幹、真護、ただいま」

「おにいちゃんおかえり!!」
「……おかえり、なさい」

玄関のドアがあいた瞬間、幹が廊下を走っていって大きな体に飛びついた。
茶色の髪に、黄色のウエア。

「いいこにしてたか?」
「うん!しんごくんとあそんでたよ!!」

帰ってきた少年――寒咲通司は、グローブを脱いで、大きな手のひらで幹と真護の小さい頭をグリグリと撫でた。

「ホント、おまえら仲いいなー。将来結婚したらいいよ、ホント」

通司は無邪気だった。
いい意味にも悪い意味にも鈍感で、精悍な顔立ちをしているというのに中学3年になっても彼女のひとりも作ったことがなかった。
彼の中心は、妹の幹と自転車しかなかった。

彼にとっては、真護は妹の幼なじみの少年、でしかないということは、幼い真護も気づいていた。

「おにいちゃんなにいってるのー」

幹が頬をふくらませて兄を睨んだ。
ごめん、ごめん、と通司はまたいつものように冗談めいて誤っている。


「ふえっ、ふえっ、うわああああああああああああ―――――」


真護の中の「何か」がはじけたのはちょうどその時だった。
その「何か」は判らないのだけれど、体の中から水分が頭にせりあがってきて真っ黒なガラスのような瞳からポロポロと大粒の雫をこぼしていた。

「真護?どうした?」
「しんごくん?」

「ふわああああああああああああ――――」

「おにいちゃん!!」

直立不動で大声を出して、涙をこぼした。頬を伝い顎から胸元へとどんどん涙が川のようにあふれて行くのに透明な雫は止めど無く流れて真護の顔をグシャグシャにして行く。
胸が締め付けられて、体中の水分が外へ外へと向かうのだ。

幹が叫んだ。
幼くまだ舌足らずの声が真護の鳴き声の上にかかる。

「おにいちゃんのせいでしんごくんないちゃったよ!!」
「え、おれ?」
「そうだよ、しんごくんおにいちゃんのことがすきなのに、おにいちゃんがみきとけっこんするとかいうから!!」

なかないで、と幹が真護に寄り添って背中をなでる。
まだ年端も行かない少女だというのに、もう心は大人の女と変りない。男がずっと少年のままの心を持つというのならば、少女ははじめから女なのだ。

「み、き・・・」
「だいじょうぶ。・・・ほらおにいちゃんも!!」
「ごめんな、真護」

妹の責めるような声に、困ったようにとお地は眉を寄せると、漸く泣き止んだ小さな体を両の腕で抱きしめた。
大きな腕で優しく包まれ、涙をぬぐわれて新語もおようやく安心したのか真黒い瞳から雫を引っ込めた。

「全く、真護どうしたんだ?」
「・・・・なんでもない」
「ホントか?」

「おにいちゃんのせいなんだよ!!」
「え?」


「おにいちゃんが、しんごくんとみきをけっこんさせようとするから!」

「みき!みき!だめ!!」

幹の高い声が静かになった廊下に響く。
焦ったように真護が通司の腕の中でバタバタともがきながらまたば来そうな声で叫んだ。



「しんごくんはおにいちゃんのおよめさんになるんだから!!!!」



みき!

止めるように叫んだ声も虚しく、幹の言葉は夜の寒咲家に響きわたっていた。

「うわあああああああああああああああ」
「みきー、お前まで!」
「だって!!おにいちゃんが!!」

その衝撃的な言葉にまた真護の瞳からは大粒の雨が降り出してくる。

知られてしまった。
大好きな人に。
知られてしまった。
ひとり抱えていた幼い恋心を。

鳴き声は先程よりも大きくなり、自分を包む通司の暖かな腕の中から抜けだそうと小さな体を捩りもがく。

「しんご、真護・・・・・なくな、男だろ?」
「うわあああああ、だって、だって・・・・・」
「ごめんな、真護。俺馬鹿だからさ、無神経で」

どれだけ暴れても通司は真護を離すのをやめない。
小さな拳が彼の頬や腕や肩を掠め殴っても、ぎゅっと、体の中へとムカへ入れて包み込む。

「はなして、はなしてよぅ」
「だめ、話さない・・・・真護、聞いて」

真護の小さな肩に通司が顎を載せた。
その肩の上のまだ柔らかく、赤く染まった小さな耳に唇を寄せる。

「俺はお前が可愛いんだ、真護」

いつもお茶良けている通司の声が、低く澄んだテノールになった。
聞いたことの無いその声に、真護の肩が揺れ、動きが止まる。

どくり
真護の心臓が大きく跳ねた。

「そうだ、約束しよう・・・・真護が大きくなったらフランスに行こう。そこで俺と結婚しよう、それなら構わないだろう?」

だから泣き止んで。

そう、
静かに耳元でささやかれた。






大きくなるとはいつのことだろうか、総考えて幾年もの月日が流れた。
小さくて泣き虫だった金城真護はいつの間にか幹の身長も、おそらくは通司の身長も抜いていた。

「真護くん、お兄ちゃん、フランスに留学するんだって」
「そうか」
「うん。見送りには行かないの?」
「俺はいい・・・部活があるから」

通司は大学在学中に渡仏してしまった。
大きくなった真護をおいて。


約束は覚えているだろうか?
もう忘れてしまったかもしれない。

幼い頃の戯れの言葉を気にしているのは自分だけかもしれない。
言葉遊びでしか無い幼い約束に縛られて動けない。

真っ青な空に、飛行機雲が真っ白な線を引いた。


だんだんと消えていくその線に、真護はひとり透明な雫を流した。
叶わない約束を思いながら。
 

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空知椎音です。
日記という名の萌がたり・妄想垂れ流し、アニメリアタイ実況、マンガ感想などはだいたいツイッターで垂れ流しています。
こちらは完全に小説置き場になっていますので、日常日記はほぼありません。

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