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嗚呼、愛しのお兄様 ep.4(三清)

お兄様第4弾です。
ようやく話が動きます。

大学生編ということですが、よいこのお酒とタバコはハタチから★


なんかいつも異常にgdgdです。
というかりりかるホモが書きたいのだよ


うん





続きで本文











**嗚呼、愛しのお兄様 ep.4**




「清正殿、これから暇ですか?食事でもいかがでしょうか」

大学の講堂で授業終わりに荷物を纏めていると赤いリュックを背負ったパーカー姿の幸村に声をかけられて清正はふと顔を上げれば、シャツに黒いベスト姿の政宗まで見える。
高校からの腐れ縁はそうそう切れることなく、内部進学という形で大学に入っても変わらぬ友情が続いていた。

「構わん。三成もバイトだしな」

建築学部土木工学科の清正、教育学部体育専攻の幸村、経済学部経営学科の政宗と三者三様の進路ではあったが第一年次では共通の共用科目もそれなりに多く、特に本日4限目の基礎法学の授業は三人とも履修している科目のひとつであった。

「つか、政宗は大丈夫なのか?その、妹は」
「構わん、もう奴も中3だしな。最近は塾で忙しくて迎 えにも行かんわ」
「しかしお誘いしたときは直ぐに妹御にメールされてましたね!」

本当に仲がよろしくて羨ましいです、と幸村が満面の笑みを浮かべれば、政宗は少し気恥ずかしそうに耳を赤く染めてふいと顔を背けてしまう。

年の離れた妹の世話で高校時代はなかなか遊ぶことの無かった政宗も年を経ればその関係は変わるものらしい。
かつて夏休みに出掛けようとなったとき、政宗が白いワンピースの少女をはじめて連れてきたときには隠し子だのロリコンだの騒がしい噂が飛び交いはしたが、「兄がお世話になってるのじゃ!」と言う幼い少女とそれを見つめる政宗のうそのように優しい瞳に仲間内皆の妹のように感じられたのだった。

あのとき見た政宗の後を小さな歩幅で一生懸命追う少女の姿 に清正は昔の自分を重ねてしまう。
ぶっきらぼうで口が悪かった兄・三成の背中をどこまでも追って歩いた幼少時代。
今でこそ身長も体格も清正の方が上ではあるが、幼い頃の2年の壁は意外と大きく背中を追っているのに気づけば引き離されてしまう。

「ここまで来たら背負ってやる」

泣きそうになる自分を鼓舞するようにかけられた言葉に涙を我慢して歩く。
兄のもとにたどり着けば「よくやった、虎」とふわりと目を細めて抱き上げて頭を撫でてくれた。
それがまた嬉しくてその背中を追いかけた。

(まだ追いつけねぇけど)

兄を思う羨望が恋情に変わった時を覚えていない。
きっとあの時の幼い虎之助のまま清正は三成に恋をしている。
幼い初恋を終わらせることも進めることもできずに。

「それ では、駅前の毘沙門の滝でいかがでしょうか?」
「わしは構わん」
「ああ、俺もだ」

幸村が上げたのは駅前の居酒屋チェーン店。
チェーン店の割りに酒の種類が豊富で料理もうまいと評判の居酒屋である。
それでは予約しておきますねとまたもや真っ赤なスマホを取り出した幸村に続いて歩き出していた。





**





「………おええぇ」

数時間後の駅前の公園で清正は踞っては苦しげな嗚咽を漏らしながら胃の中の内容物を吐き出していた。
そこまでハイペースだったのか政宗と幸村にはわからない。
乾杯のビールともう一杯くらいはアルコール立った気もするが、二人ほどに飲んでもいない。

「馬鹿め、限界くらい自分で把握しろ」
「お水いりますか?とりあえず三成殿には連絡しました から直ぐに迎えに来ますよ」

青白い蛍光灯がジジジと切れかかった音をたてる公衆トイレの一室の便器にに清正は体を預けて嘔吐を繰り返していた。
幸村からしっかりとペットボトルを受けとるあたり完全な急性アルコール中毒状態出はないのは救いである。

「みつなり、は…よぶな」
「でも」
「かえれる」
「貴様は馬鹿か」

粗方胃の内容物を吐き出したのか、居酒屋を出たときは銀色の髪と同じくらい蒼白かった肌にも赤みが戻って涙に濡れた瞳も正気が帰ってきていた。
しかし、吐瀉物を流しきりトイレを後にする足はふらふらと覚束ない。
一人で帰ると当人が言ってもそんな千鳥足で帰して事故にでもあったら寝覚めが悪い。

「みつなりはよぶな」
「と言いましても、あと15分で迎えに来 ると」
「やだ、だめだ」
「何でそんな必死になる。弟の失態を拭うは兄の役目じゃ、勝手に世話させておけ」

年の離れた妹を持つ政宗の実感に溢れた言葉が清正に降りかかる。
幸村も何度も兄に助けられたのか「甘えてしまえばよいですよ、若さ故の過ちですから」と俯いて駄々をこねはじめる清正を宥めるように声をかけた。
しかしそれでも清正の強情は溶けるはずもなく大丈夫だと繰り返す。

「何がそこまで貴様に駄々を捏ねさせる。まるで懸想中の女子のように対面ばかり見繕って……兄だろうが」

ふらつきながら駅に向かおうとする清正の腕を掴んで引き寄せると眉間に皺を寄せて睨み付けた。

「兄じゃない…兄だなんて思ったことなんてない」

幼い頃の兄はヒーローだった。
少女のように線の 細い体躯と人形のように整った顔立ちからは想像できないほどのやんちゃぷりで幼い清正を導いてくれた。
兄と認識するより先に三成は清正にとってヒーローであり、初恋の相手だった。
『佐吉にぃに好きぃ』見上げて素直に告げることができたあの頃が懐かしい。大好きと言って直ぐに駆けていけたあの頃の自分が羨ましい。
プライドとか世間体とか常識とかに囚われたまま何年も心の奥に隠し続けた思いは酒の力で崩れ去った理性の中でしか口に出来なくて。

「好きなやつにこんなカッコ悪いとこ見せたくねぇ」
「それは…石田殿に恋を?」
「あぁ…そうだ…ずっと片想いだよ、男相手にさ、気持ち悪いだろ」

三成を待つことなくその場から逃げ出そうとするその腕を掴んで心配そうに幸村が俯いて苦 しそうな清正の顔を見つめる。
声を圧し殺し泣きそうになる涙腺を呼吸ひとつで押し込めて。

「馬鹿が」

沈黙と重い空気をも切り刻んだのは政宗の例利な声だった。
政宗殿!と叫ぶ幸村の口を片手で制して、俯く清正の額に自らの額を近づける。

「貴様が兄に懸想してるのが不快ならばな我ら全員不快な男よ」
「へ?…政宗」
「ままままさむねどの!わわわたしのこと!」

にやりと口角の上がる政宗の瞳も酒に据わっている。
彼も誰かに打ち明けたかったのだろうか、自分の心の中の黒い部分を。
ぼんやりと顔を挙げれば真剣な政宗の瞳に気圧されて清正は息を飲む。

「真田、貴様の恋路云々は本多から聞いたわ、島先生と幸せ過ぎて実家に帰らんらしいとか」
「義姉上ぇええ!」
「島って 高等部の左近?」
「らしい」

呆気なく自らの恋路を暴露されて顔を真っ赤にさせて座り込む幸村。
本人は隠していたようだが、裏表のない素直な男である。
なんとなく誰かと恋愛しているのは腐れ縁である政宗にはバレバレであったのだが、清正は全く知らないでいたようで目を開いて幸村を凝視していて。

「マジか、半同棲かよ」

下級生女子の熱い視線や黄色い声援を浴びながらも色恋に興味無さそうな顔をしていた幸村がこれまた浮き世場馴れした大人の男を落としていたなんて同世代の清正としては出し抜かれたように感じて呆然自失とはこのようなことだと声が出せない。
自分のことを真っ先にしかも他人の口からばらされた幸村もほてった肌を手のひらで押さえながら「政宗殿も告白するべきで す!」と上目使いに叫び出す。

あの幼い妹だろうか。
効率と合理化の塊の政宗が唯一と言っていいほど自らの時間を割いてきた少女。
もう中学生ならば、多少はロリコンの気が否めないが家族・同性の自分よりましのような気がする。

「妹か?」
「違うわ。あれを好きになれればこんな苦しくはない」
「ロリコンでも?」
「大人になればただの歳の差夫婦になろう」
「では」

語り出す政宗の瞳に翳りが広がる。
どこか自棄になったような、それなのにまだ希望を捨てていないそんな瞳。

「養父じゃ」
「雑賀のおっさん?」

義父の部下の男のことは清正もよく知っていた。
連れだってキャバクラ遊びをしてはねねに絞られていた姿は記憶に新しい。
高等部のイケメンコンテストで学年代表に選 ばれること3年連続。
大学進学後もはやくもコンテストエントリーの噂も名高い政宗が、親子ほど年の離れた男を好きだなんて。

「おかしい…って思ったこと無いのか?」
「そんなモノなど忘れたわ」
「いつからなのですか」
「知らん。気付いたら好きになっておったわ。」

ベストのポケットから緑と黒のパッケージのタバコを吸い出すと慣れた手つきで政宗は火をつける。
大きく吸い込んで吐き出した吐息は僅かな悲しみと切なさを孕みながら夜風に溶けていく。

「アイツを幸せにするのはわしじゃ。妹にも誓った…3人で幸せな家族になるとな」
「まさむね」

清正は絶句する。
自分が憧れや初恋やぐちゃぐちゃな感情を常識との間で弄んでいた頃にふたりは自分の気持ちに整理をつけていたなんて。

「怖く、ねぇのかよ」

2人の瞳をまっすぐ見れなくて、清正はうつむいて呟いた。
何がとは言えなかった。
言うことすら怖かった。

「怖いわ」
「怖くないわけなどありませぬ」

俯いて祈るように組まれた清正の両手を幸村がぎゅっと握り返す。
項垂れた頭の上に肘をついて政宗が紫煙を吐き出す。

「わたしはつい流れでつたえてしまいましたがずっとひとりで思ってるだけにしようと思ってましたから」

下から覗き込んで暗い顔の清正に幸村はふわりと笑いかける。

「けれども向こうも人の子です。相手に懸命さが伝われば通じぬ思いなどありませぬぞ」
「ゆきむら、」

こわいと言いながらも天井知らずのポジティブさに相手が無意識のうちにその気にさせてしまうのは幸村の能力といってもいいだろう。
現に絶望の淵に佇んでいた清正の瞳にいつもの光が戻っている。

「言えば今の関係が壊れるかもしれん。だがな言わねば壊れるのは自分じゃ。諦められぬからそうふさぎ込むのだろうが。」

携帯灰皿を取り出して短くなったタバコを政宗は躙り消すと、また新しいタバコを咥えてライターで火をつける。

「それでもわしは告げるぞ。あの馬鹿を…馬鹿と妹を幸せにするのはわしの役目じゃ」

タバコを咥えた唇が綺麗な弧を画く。
自信と決意。

2人の言葉を聞いて清正は考える。
自分には覚悟があるのか。

三成を、兄が好きだという自信と決意が。

「お前ら…考えてるんだな」

ただぼんやりとした憧れや恋心は清正の中に昔からずっと存在したけれど、幸せとか未来とかそんな具体的なことなんて考えたことなんて無かった。

兄弟のままでよかった。
一緒にいれるだけで良かった。
そう思って――いや思い込んでいたのかもしれない。

「当たり前よ、馬鹿め。貴様は石田に彼女ができて諦められるのか」

「………無理、だな」
「ならば結論は1つですよ」

兄はモテる男だった。
口を開けば罵声と皮肉が溢れるが顔だけはいい。
バレンタインはいつもチョコね山を抱えていたし、卒業するとなったら告白する女子が絶えなかった。
それでも清正が知る限りは彼女のひとつ作ることは無かったのだけれども。




「ほら、愛しのお兄様の登場じゃ」

さっさと帰れ、とタバコを咥えたままの政宗に背中を押される。
顔を上げれば公園の前に停められた兄の愛車が見えた。

「ご武運を!」

級友ふたりの言葉に肩をこわばらせ、なんとか腕を上げて応えるが早まる鼓動は止まらない。








「なんだ、幸村に死にそうだとか言われてきてみれば。平気そうではないか」

何度も座り清正の一番心地よい角度で、一番しっくりくる広さに固定された助手席に体を押し込みシートベルトを締める。
手にしたタバコを備え付けの灰皿ですり消して三成はゆっくりと発信する。
酔っ払っている清正が気分が悪くなるといけないと。

「まぁな……つか、悪かったないきなり呼び出して。帰れるって言ったんだけどよ」
「いや、かまわん。貴様が戻らねば落着かん」

ステアを握る指先は綺麗に整えられて美しい。
清正が見つめて喋りかけても視線を向けないのは機嫌が悪いからではない。
安全に運転したいという現れだ。

(あぁ)

その美しく整えられた横顔を見つめて溜息をつく。

昔からそうだ。
口の悪い美しい兄は普段はあんなにも厳しく当たるのに、肝心な、清正が弱ってるそんな時に限って優しいのだ。

『佐吉にぃに』
『どうした』
『……なんでもない』

初めて自分の部屋が与えられて羽柴夫妻た時、その広さと静けさに眠れなくなった事があった。
誰にも言えずにようやくたどり着いた兄の部屋。
一人本を読む兄の熱心さについに添い寝をして欲しいなんて言えるはずもなく、声をかけたもののそのまま自室に帰ろうとした。

『虎。ちょうどいい所に来た、まだ寒いから俺の湯たんぽになれ』

兄は本から視線を上げることはなく、かけられた言葉も命令口調でぶっきらぼうなものだったけれど、幼い清正の小さなプライドを崩すことなく、一番欲しいものを与えてくれた。
昔から、一番苦しい時に一番欲しいものをくれたのは兄だった。
優しさも、厳しさも全部。

(あの優しさを独り占めしたいんだ)

心地良い助手席も、幼い頃の添い寝の思い出も、二人暮らしの生活も、兄のこれからも。
ずっと独占したいんだ。
特等席でこの美しい横顔を眺めていたい。

対向車線のヘッドライトに照らされた三成の横顔を眺める。
今までずっと心のなかに溜まっていたもやがすうっと溶けていくような気がして。

「三成」

名前を呼んだ声は思っていた以上に落ち着いていた。
兄が自分をどう思ってるかなんて知らない。
もしかしたら、この一言で今の関係が変わってしまうかもしれない。

(それでも、言わなきゃ)

言わなければ、美しいひとは清正のものに絶対にならないのだから。

「何だ」

三成はこちらを向かない。
それでも構わない、いや。好都合だ。
目を見てしまったらきっと恥ずかしくなってしまうから。

清正は大きく息を吸い込んだ。






「三成、愛してる」





俯いてそっと呟いた。
窓の向こうのネオンが眩しくて、ガラス窓に反射する三成の顔は見えない。









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