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殿と左近の生きる道。 -2-(三左)

 
あしたは!
ついにせんむそ猛将伝発売ですね清正!
楽しみで、爆発しそうです!

というわけで、先日の三左のつづきです。
今回はとの視点になっております。

と言いつつ、あまり整合性がよろしくありませんね!
ぎゃふん!
うぐぐ・・・
精進します



続きで本文





 

**殿と左近の生きる道。2**


 
「殿、待ちに待った天下餅、食ったのは家康公じゃなくって石田三成なんだから、もっと嬉しそうにしてくださいよ、ね」

と言われたのにも関わらず笑うことができなかった。
漸く掴んだ待ち望んだはずの天下泰平なのに三成の心を覆うのは闇ばかり。
念願かなったりと言えど失われたものの大きさともとに戻らない絶望間に心にぽっかりと穴が開いていた。

寝るのが怖かった。
目の前で倒れた――自分が倒した清正が夢のなかで自分を、三成が手にした泰平を嘲笑うような気がして、眠りは酷く浅いものになっていた。
それでも激務は三成を襲い、朦朧とする頭では何が現実で何が幻か解らなくなる。

『犠牲の上の天下泰平に満足しているのかよ』
『光秀の三日天下と変わらねえよ』
『同じ豊家の子飼いを殺してそれで勝ったつもりか』

頭の中の清正が三成を詰る。
消そうとしても消えない妄想に、次第に自分がいなくなれば、と思うようになったのは、戦後処理が大分落ち着いた頃だった。
大阪登城の回数も減り最近は佐和山の居城にいることが多くなっていた。
それにも関わらず三成の病気とも思えるようなほどの激務は抑えられるどころか日増しに膨張していって。

「殿、無理しないでくださいよ、まだまだ殿には生きてもらわなきゃこまるんですから」

政務書類を持つ左近の言葉に返す台詞も段々と適当になってしまう。

まだやることがあったのか。
もう豊家中心の天下は成った。
秀吉もねねも清正もいない世界にいる必要などない、そう思うと激務の末の過労など怖くはなかった。

「じゃあ左近は!」

闇を切り裂く破魔の剣が虚ろな三成を解き放つ。
いつの間にか激務に追われ見えなくなってしまった左近はひとまわりもふたまわりも小さくなったように感じて疲弊していたのは自分だけではなかったのだと今頃になって気づく。

「泣くな、左近・・・俺はお前の涙に弱いのだよ」

自分を差し置いてまで三成のために働く左近。
堅物過ぎる自分と足して割るとちょうどいいほどの柔軟さを持つ天下一の軍師がしゃくり声を上げて三成の名前を呼んでいた。
押し倒された体を起こしてしゃくりあげる左近の頬に触れれば、「きれいな顔が台無しですよ」といつものからかうような口調で漸く見たかった笑顔を浮かべる。

「殿には左近がいるじゃないですか…左近を、俺を見てくださいよ、どんなときも、です。」

肩に埋められた額の重さが心地いいだなんて。
預けられた固い体を抱くことがこんなにも幸福だっただなんてすっかり忘れていた。

何もかも失ったと思っていた。
天下泰平という大きなものを掴んだ代わりに今まで得たものが全て無くなって自分の回りには何もないと思っていた。
全てを失った世界に生きる意味などない。
自分にはもうなにも残されてないと思っていたのに、まだ、失えない、失うわけにいかない人が残っていたということを漸く思い出した。

「左近、すまぬ…何でこんな大切なものが近くにあることを忘れていたのかわからないのだ」

肩口にのせられた頭を撫でながら申し訳なさそうに呟く。
黒く艶のある左近の長髪に指を絡ませればゆっくりとあげられた視線と交差した。

「もう、左近のこと置いていくとか言わないでくださいよ」

腫れた目尻で睨む左近を涼しい顔をして笑えば顔を真っ赤にして左近がふいと視線をはずした。

「もちろんだ。もうはなさんよ」

無精髭がのび放題の左近の頬に手を添えるとふわり柔らかな笑みを浮かべて三成はそのかさかさとした唇に接吻を与える。
ささくれた薄皮を舌で舐めとり何度も唇に触れるだけの口づけを続ける。
忘れていた左近の感触を思い出すように。

こうやって左近に触れたのがいつくらい前なのか三成にはもう思い出せない。
関ヶ原以前も豊家を支える家臣の一人として政務に追われていたが三日と待たずにその肌を触れあわせていた。
それなのに関ヶ原の亡霊に取りつかれてからは左近の存在すら忘れたように交わした言葉さえ思い出せぬほどで。

「殿、いつまで口を吸ってるんですか」

接吻の合間に困ったように笑いながら左近が三成に問いかけた。
泣きはらした顔に笑顔が戻り、三成の心の氷も全て溶けていく。

「俺が満足するまでだ」
「それじゃあ、夜が終わっちゃいますな」

首に回された腕に体重が乗る。
自分よりも大きな男の体を受け止めながら三成は左近を抱きしめたまま畳に倒れていく。
いたずらっぽく呟いた唇が、ゆっくりと下りてきて、まだ何か言いたそうな三成の唇を静かにふさいだ。

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1900/04/14
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空知椎音です。
日記という名の萌がたり・妄想垂れ流し、アニメリアタイ実況、マンガ感想などはだいたいツイッターで垂れ流しています。
こちらは完全に小説置き場になっていますので、日常日記はほぼありません。

支部にも同時にUPしています。
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現在視聴中(ツイッターリアタイ実況)のものは匿名、単車魔法使いです。
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