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お花見大作戦(83コウガト)



こないだの雨風で結構花が散っちゃいましたね、明日も雨といいますし、
今年のお花見は終わりかなーということで。
花見小説です。
花見てないけど。

なんか、雨ざんざんぶりなのは、こないだの爆弾低気圧の日から書いてたからです。
散らないといいなー
って思いながら。

あの日は、持ちましたが、こないだのがダメでしたね。



ちなみに、私は桜餅といえば道明寺、な東海生まれ関東在住です。
桜餅よりもよもぎ餅のほうが好き、ただでろあまなものが大好きなしいねでした。






ということで、
ガトー少佐の最後のセリフ、かっこいいの募集です。







続きで本文








p.s.明日誕生日でガトーよりも年上になるのでなんかクレくださいお願いします









花見をしようよガトー、とコウがガトーに約束を取り付けたのは二週間前。
度重なる戦争で地球の気候は壊れ、桜は一部の日系コロニーでしか見られなくなった。

『春の花なのに変なの』
幼い頃の疑問。
年中温暖で過ごしやすさばかり求められるコロニーには何故か桜が少なかった。
春に咲くのが桜なのだから一年中咲いてもいいのではないか。
風に揺られて舞い散る花びらを追いかけていた少年時代。






「冬場寒くないと咲かないんだって。空調管理が大変だから少ないんだよ」

ガトーが以前にいたコロニーは今住むところよりも温暖で常春のコロニーだった。
しかし菜の花やパンジー、チューリップなど鮮やかな花はあるものの、桜だけはなかったという。

「だから一部の四季があるような日系コロニーにしかないんだよ」
「そうか、ウラキはなんでもしっているな」
「えへへ」

ガトーの白磁の指がコウの髪の毛をすくように頭にのばされる。
誉められることは意外にも少なくてその一言だけで天にも昇る気持ちになれる、といったら安上がりだろうか。

「じゃあ来週は花見だね。僕、穴場を知ってるんです」

桜、二人じめだよと見上げて笑えば、深く刻まれた皺が少し薄くなったような気がした。






**お花見大作戦**






『繰り返しお知らせします、ただいま気候調整管制室のトラブルにより、予定外の雷雨になっています。復旧次第予定通り――』




約束の日は予定では晴れだった。
最高気温17度、快晴。
それなのにアパートの窓から見えるのは大粒の雨。

「雨だな、今日は出られまい」
「なんでこんな日に限って!」

コミュニティラジオからは延々と天候管制の不調を訴える放送が流れている。
いつ止むだろうかと窓の外のバケツを返すような空をガラス越しに眺めていれば、打ち付ける雨音が振動となってがたがたとはめつけの悪い窓を揺らした。
悔しそうに雨に煙る屋外を眺めるコウにガトーは幼児を見るような柔らかな視線を濃紫の瞳に宿らせる。
なだめるように艶のある黒髪を撫でれば、今にも泣き出しそうなくらいに潤んだ漆黒の瞳を伴ってコウが振り返った。

「また次にいけばいいだろう」
「でも」
「君の用意した和菓子とやらをいただこう。玉露なるジャパニーズグリーンティを用意したのだ」

まだ雨を恨めしく眺めるコウに困惑したように眉を下げてガトーが笑う。

最近、天候管制がうまくいかないのは少し気にしていればわかることだった。
提示されていた気温より下がり厳冬となった1月、春を呼ぶ雨が雪にかわった2月。
桜の開花予報が日に日に伸びたら3月。
どう見ても天候管制がうまくいっていない証拠である。
漸く4月になり暖かくなりだしたと思えば、気温が上がりすぎてしまったりスコールがおきたりと、宇宙世紀黎明期からある古いコロニーは今年に入り調子を下げている。

所詮は人の作り出した偽物の大地なのだ。
不調が続けば新しいコロニーへの移住が増えてここは廃棄されてしまうかもしれない。
そして知らぬうちに宇宙に浮かぶデブリになるのだ。


「ガトー?」

どうしたの?と黒く丸い眼がのぞき込むように見上げる。
また眉間に皺が寄っていたらしい。

「何でもない…玉露を買ったはいいが淹れかたがいまいち難しくてな。キュウスといったものが必要らしいが…」

わからずに今日まできてしまった、と誤魔化すように言葉を繋げれば、あぁ、とコウは合点がいったようで人懐こく、まだ幼さの抜けない笑顔を見せた。

「急須、ね。旧日本のティーポットだよ」
「ほう、グリーンティを淹れるにはそれがいるのか」
「まぁ一般的にはね。ここは日系コロニーだし、今度探してみようよ。洋式のティーポットやマグカップでもいいけど緑茶は急須に湯飲みだよ、ガトー」

『花見にはコレ』とコウが昨日買ってきた和菓子の詰め合わせを冷蔵庫から取り出してリビングのテーブルに並べる。三色の串団子、桜餅、道明寺と鮮やかな色彩がモノトーンの部屋に彩りを添えた。

「玉露の淹れかた忘れちゃって勿体無いことしちゃいました」
「淹れかた?そんなものもあるのか」

盆にガラスのティーポットと同じくガラスのカップをのせたコウがリビングに現れる。
透明なガラスの向こうに柔らかな黄緑に光る水。

「緑茶は繊細なんだ。特に玉露なんて低温でゆっくりと色を出すからどんなお茶より難しいんです」
「ほう、詳しいなウラキ」
「腐っても日系人だからね。ガトーが紅茶に一家言あるのと同じだよ」

誉められたのが嬉しいのかコウの頬に赤みが指す。
高い位置から緑茶を注ぎ入れればふんわりと柔らかな香りが部屋を包んだ。

「いい香りだな」
「うん、温くなる前に和菓子もいただこうよ」

目を細めて目新しい緑茶を堪能するガトーにすりよるようにしてコウが丸い桃色の和菓子を差し出した。
道明寺、と書かれたパッケージを物珍しそうにガトーは眺めてコウがする通りに手掴みで小さな和菓子を持ち上げた。

「葉はとらないのか?」
「大丈夫、食べれるよ」
「ふむ」

桜餅の飾りの葉は確かに初見では食べにくいのだろう。
頷いて見せても一向にかぶりつけないガトーにコウはそっと笑う。

「これ、桜に見立ててるんです」
「あぁ…八重桜という種類のものにそっくりだ」
「ガトーもそう思うんだ」

桜ばかりを集めた写真集で見たとガトーが呟けば、コウが明るい笑い声をあげる。
むっとした表情を向けたガトーにごめんなさい、そんなつもりはなかったと謝ると、笑いすぎてたまった涙を指で拭った。

「満開の桜の木の見立てだよ、ガトー」
「そちらか」
「でも僕も道明寺は八重桜の花にしか見えないんです」

コウが幼い頃過ごしたジャパニーズコミュニティはソメイヨシノよりも八重桜が多かった。
店頭に並ぶ桜餅は高価でなかなか食べれなかったのだが、ある時幼いコウは見つけたのだ。
大好きな道明寺に似た花を。

「公園に咲いているのを見たとき、桜餅が咲いてるって思ったんだ。あの花を集めてお店で売るんじゃないかって。だからこっそり木に登って花をむしって」
「君は食べたのか」
「ええ、中にあんこが入ってると思いましたよ」
「それで」
「ただのもさもさした草でさ、なんか裏切られた気分になったよ」

だろうな、と幼いコウの体験に相槌をうっていたガトーもつられて笑いだす。

子供の発想は恐ろしい。
菓子が木になるなんて普通は考えないのに。
こうだと決めつけたら行動してしまう、無邪気な好奇心の塊。

「それで祖母に言われたんです。それは桜の木を和菓子に見立てたんだって。でも幹がないのにおかしいって僕は信じなかったんだ」

息を吹き掛けながらぬるい緑茶を飲み込んでコウは笑う。
その姿に漸くガトーも手にした桜餅にかぶりついた。

「甘いな」
「菓子だからね」

指についたあんこを舌でなめとると、ガトーは台詞とは真反対の渋い顔をして緑茶を飲んだ。

甘いものは苦手だっただろうか。
いままでのことを思い返してもコウには思い当たる節が見当たらないでいた。

「和菓子はヘルシーというのに」
「油脂がないだけで砂糖の塊ではあるよ」
「ふむ……それで、桜の話は」

話が逸れてしまった、というガトーに、コウは話を再開させる。
何度か逸れる内容にどこまでしゃべっただろうかと考えるように残った桜餅を食べきるとゆっくり話始めた。

「そう…下から見るから幹が見えるんであって上から見れば花しか見えないんだから」
「上から見ればいい、と」
「ええ…軍に入ってMSに乗り出していつかこれで見ようと思ったんだけどね」



残念ながら軍の士官学校を卒業してから配属されたのは南半球。
桜など見当たらない荒野の果て。
それからすぐに宇宙に上がり桜など見る前にコウの「戦争」は終わってしまった。
MSから桜を見ることなく。

もうパイロットじゃないから、と少し寂しそうにコウは笑う。
未だ軍属ではあるが地球からの直通便もない辺鄙なコロニーの僅かな駐在軍人にはMSなど与えられるはずもなくのんびりと半隠居のような日々を過ごしていた。

「何だ君はまた私にガンダムを盗めというのか?」
「あぁ…それもいいですね。貴方の階級にあった軍服なら今度は僕が難なく用意できる。アナベル・ガトー少佐」

あの秋の出会いを邂逅するように告げられた言葉にコウも敬礼をしながら答える。
短くて長かった二人の戦争の時はガンダムを奪っていったガトーを止める立場であったコウだが、今度は共同戦線を張ろうというのだ。

「二度目の軍法会議にかけられたいのか?」
「そんな今度はうまくやりますよ……だってあなたがいるんだもの」

冗談なのか本気なのか解らない会話を続けていけば薄いレースのカーテン越しに柔らかな日差しが射し込んできていた。
つけっぱなしのラジオからは気候管制室の制御エラーの復旧が流れていて。

「あ」
「晴れたな」

窓を開ければ風に吹かれてどこからか桜の花びらが舞い上がって二人のもとに届いた。

「さて、ウラキ中尉」
「なんでしょう、少佐」

スリッパをきゅっとならしてガトーがコウに向き直れば、コウも笑いをこらえながら敬礼で迎える。

「本作戦の前に下見をせねばならん」
「はいっ、ご案内致します、ガトー少佐」

腕を後ろ手に組みガトーが恭しくだがわざと仰々しい程に演技がかって作戦を語り出せば、吹き出しそうになりながらコウが背筋を伸ばして答える。




「そうだ、ガトー…いや少佐。この作戦の名前はどうしましょう」

玄関で靴を履くガトーに後ろから問いかける。
そうだな、と靴紐を結びながら一瞬言葉を途切れさせ考えを巡らせてから、振り替えってそっとその作戦名を告げた。





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