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俺の左近がこんなに尻軽のはずがない 純情幸村編(幸左)

こんばんわ。
ようやくでけました、欲求不満左近第三弾です。

えー
幸村目線なので、左近が欲求不満というか、幸村の純情なだけなんですが。


ようやく、過去に戻って、三成を仲間にしたところまで進んだのですが、
左近が出て来ませんね
左近と絡みませんね。
みつさこ、どうでしょうか。


つまり、左近は山田とセクロスしてるのか。
はいはい。


今後の予定としまして、
・山田狂乱編(トチ狂って左近を軟禁調教)
・童貞清正編(清正の童貞をいただく左近)
・怒りの佐和山編(痴話げんか)
こんな感じになって行きそうです。
どう見ても間男山田です。


いつまで続くかはわかりません。
つか、ゲーム・・・・クリアまだまだ先だ・・・・






続きで本文













**俺の左近がこんなに尻軽のはずがない 純情幸村編**





夜の闇を切るように幸村の槍が唸る。
誰もが寝静まった後、幕舎の脇で鍛錬を積むのがこちらの世界に来てからの彼の日課になった。

(心が弱いから)

妖蛇が現れた後、心を囚われ敵のいいように扱われたのは真っ直ぐな心根を持つ幸村にとって一生の不覚であった。
本来なら惑わされるはずのない妖術に打ち勝つにはこれ以上の鍛錬が必要と夜な夜な槍をふるう。

『そんな根を積めちゃダメですよぅ、幸村様ぁ』

忍の少女が心配そうに声をかけることもあった。
しかし、未だ主家・信玄や盟友・三成は見つからない。
忍び寄る魔の気配を打ち払うためにも幸村は槍を振り鍛錬を続けることを止めなかった。

『そなたがわたしを解放してくれたように、わたしも皆を救いたいのだ』

赤茶けた髪の部下の頭を撫で、自分の幕舎に帰るよう命じたのはふた刻も前のこと。
どんよりと厚い雲が落ち、星も月さえも見えない異界の夜の下、幸村の息遣いと槍が空を切る音しか聞こえない。



「精が出るねぇ」

がさり、闇の中から草を分ける音と共に声が聞こえる。
低く、どこか艶めいた声の主が誰だか直ぐにわかり幸村は槍を振る手を止めてそちらを見やる。

「左近殿」

長い黒髪を後ろで結わえ、灰緑の着流しを着た左近が目に入るなり幸村の鼓動が大きく跳ねた。

左近はもとの世界で知り合った軍師である。
異世界に来てもその手腕をかられて討伐連合軍の軍師として采配をふるっていた。

「こんな遅くまで鍛練たぁ、若いねぇ」

しみじみと言葉を吐き出して、左近が目を細めて笑った。
陣羽織と甲冑を脱いだその姿に幸村の拍動は高まっていく。
平服の合わせ目からのぞく日に焼けた肌にばかり視線がいって、ついふしだらな妄想をしてしまい、幸村は額に汗で貼り付いた前髪と一緒に煩悩を振り払うように頭を激しく揺り動かした。

「左近殿こそ今まで軍議だったのでは?」

額を伝う汗を手の甲で拭って幸村は問いかける。
別のこと――戦のことを考えていなくては淫靡な気を纏う左近の姿にはしたない妄想ばかりが幸村を包んでいく気がして。

「あぁ……軍議、そうだな、軍議か…」
「左近殿?」
「何でもないですよ」

軍議かと問いかければ左近は澱んだ空を見上げて苦笑いを見せながら歯切れのわるい答えを返した。
戦で見せる鬼のような勇猛な姿とは違う触れれば消えてしまいそうな程儚い左近の姿。
曖昧でぼんやりとした答えに幸村は怪訝そうに眉間に皺を寄せた。

「何か心配なことでも?」

軍師である左近はただ命令されたままに槍を唸らせるだけの幸村とは責任も背負う重みも違うはずだ。
気だるい雰囲気を醸し出す左近に幸村は水筒の竹を手渡す。

「いや…何でもない」
「本当ですか?まだ私は未熟ですが左近殿の力に…」
「幸村…」

左近に近寄り、年をとってもまだ衰えることのない筋肉ののった肩を掴んでその瞳を覗きこむ。
純粋に力になりたい、そればかりではなかった。

憧れわずかばかりの恋情を持った相手にいいところを見せたいいい顔をしたい、そんな下心があったのかもしれない。そんな疚しい感情が心のどこかにあったせいからか普段の真っ直ぐな瞳は揺れ動き、左近の瞳を避けるようにそのはだけた首筋や胸に落ちていった。

「これ…は?」

すうと視線が落とされた首筋に赤い鬱血の痕。
打撲傷とは違う小さな痕。

「あぁ……」

バレちまったか、そう左近は小さく頭を掻いてばつの悪そうに苦笑いを見せた。

「バレた?」

眉間にシワを寄せて怪訝そうに問いかける。
純粋やら唐変木やら初心やら言われている幸村とてその痕が何であるかは想像できる。
一人前とはいかずとも、成人を迎えて久しい男子だ。
人並みの経験だってある。だから、左近の胸元に落とされたその痕が何かだってわかるのだ。

「軍議なんてしてない、さっきまで他の人の幕舎にいたんですよ」
「左近殿!三成殿は…三成殿が…」

左近から視線を外して幸村は拳を握りしめる。
元いた世界では左近が三成と主従以上の中だと囁かれていたし、戦でも内務でも四六時中一緒にいると言う印象が強いだけに、左近の告白には幸村は目を剥いて驚きの言葉を漏らした。

「それはッ」

「不義、かい?」
「不義…ではないのですか?」

左近の胸元を掴む手のひらが白くなっていく。
力を入れすぎて震える腕を止めるすべは見当たらない。

契りを交わしたなら他人と交わってはならない。
それは姦通であり、不義である。
良い人がいるものに懸想してはならない。
横恋慕は不義である。

そう幸村は教わった。
だから、一時期武田にいた時分から慕っていた左近を思うことを諦めた。

(否、諦めたかったのだ)

自分が幼すぎて打ち明けることもできずにいた人を風のように浚っていった三成を羨みながら、叶うはずもない淡い思いを正義と不義という白と黒の箱に仕分けて、忘れようとした。
忘れたかった。
諦めてしまいたかった。

なのに。

「…じゃあ、情人を放ってふらついているのは不義じゃないのかねぇ」
「左近…殿」

すうと目をそらして自嘲するように漏らされた言葉は泣いてしまうのではないかと思うほどに切なく響き、聞いている幸村の方が苦しくなってしまう。
会わせ目を掴む幸村の手を包み込むように重ねられた左近の手のひらはひんやりとしていた。汗
ばむ幸村の手のひらから熱を奪うように、骨の浮かぶ甲をなで、槍を握りすぎて潰れた爪を左近の指がなぞり遊ぶ。

「ずっと姿をあらわさないでいる人より、傍で慰めてくれる人を選ぶのは人の理だろう」

救いを求めるように弱々しく見つめる瞳、すがり付くように頬に伸ばされる手のひら。
これを掴めば。

(左近殿が我が手に)

ここは仮想空間だ。
三國志の英雄も、南蛮の女武者も、源平の武士もいる。

(夢ならば…)

この世界は、幸村の夢なのかもしれない。
目覚めれば妖蛇もいない甲斐の屋敷に戻っているのではないか。
都合のいい解釈ではあるのは幸村も理解していた。

(左近殿を…)

夢ならば不義や正義など関係ない。
思うがまま好きなままにすればいい。

「幸村…お前だって」

近づく顔を抱き締めて接吻のひとつでも与えてやればいい。
左近との出会いは幸村の方が早いはずだ。
とうに現れない三成を出し抜いてもいいではないか。

頭の中で自分の貌をした鬼が笑っていた。




「どうせ…殿はいないんだから」

左近の声が鼓膜を舐める。
その声にはっと、幸村の意識が澄みわたった。

「左近殿…いけません」
「幸村?」
「左近殿にはやはり三成殿が」

重ねられた手のひらを剥いで、伸ばされた腕からするりと体をぬけださせる。

(左近殿だって三成殿を忘れられないのだから)

誰かを思う身代わりほど苦しいものはない。
忘れたといっていた左近が一番三成を求めているなら自分の出番などない。

「失礼いたす」

槍をもって、幸村は左近のもとから走り去る。
逃げるのではない。

心を覆う靄も疚しい思いもない。
ようやく幸村の思いは初恋になった気がした。



「若い…ねぇ、ホント」

左近の寂しげな言葉はすうと厚い雲に呑み込まれて、走り去る幸村には届いていなかった。




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